・・ ――、
さっきの子はあそこの子か、
どっかで見たことあんなと思ったんだ。
思い出すのに時間がかかるってのはトシかね。
[唐突に先般の若い女性客の顔に昔を思い出して懐かしさに目を細めた。
自分達には子どもはいなかったが、あのくらいの歳の子がいてもおかしくない歳だ。
そう思うと老け込んだ気もするが、まだ「食い足りない」ものはたくさんある。
たとえばこの味噌焼きおにぎりの、味噌の種類を変えたらどんな変化があるかとか。
おでんのお供に食うには握り飯自体は白米が好ましいが、単体で食うなら3軒先の漬物屋から刻んだ高菜を摘まんで一緒に味わいたい、とか。]