--[旅行の日がやってきた。 身支度を済ませ、ボストンバッグを担いで廊下をどたどたと歩く。父の部屋の扉をノックして、返事も待たずに開け出発の旨を伝えれば部屋の奥で手を合わせていた父はすぐに入り口までやってきて「気を付けて」と笑う。 靴を履いて家を出る。「いってらっしゃい」と見送る母の背後で、兄がひらひらと手を振っていた。]*