んぁ、言ってなかったっけか。
女房はもう随分前に出て行っちまったよ。
[男は「器屋」。
陶器や木材の「うつわ」を作る職人兼卸売屋だ。
親の代には商店街に実店舗も構えていたが、接客業に向かない強面の男が継いでからは店を閉め、飲食店などに作った器を売ったりこうした町おこしのイベントで使い捨て食器を用立てたりしている。
準備こそ忙しかったものの、当日は完全に客である。
健康診断の結果に目くじら立てる嫁にも愛想を尽かされたことだし昼間から飲んでやるかと知り合いの女の店に立ち寄れば目論見は一蹴された。>>7
敵わねぇな、と苦笑する。]