彼女と初めて出会ったのは、医師と患者として。
診察のたびに他愛のない話をしながら、いつしか、彼女の分け隔てない優しさと、真摯に医療に取り組む姿勢に惹かれていった。
「経験を積んで、そのうち開業医になるつもり」
と、無邪気に夢を語る彼女に
「僕の村へきて、診療所を開設しないか」
と、僕なりの不器用なプロポーズに、彼女は応えてくれたんだ。
朝二人で、僕の入れた珈琲と、彼女の焼いたスコーンを食べて、二人とも仕事に向かう…。
そんな日常がいつまでも続くと思っていたよ。
…ある日、いつもは僕より早く帰っているはずの彼女がそこには無かった。
そんな日もあるだろう…と、その時すぐに診療所へ様子を見に行かなかった自分を今でも許せないよ。
いつまでも戻らない彼女に嫌な予感がした僕は、彼女の診療所へと急いだ。
その道中、人気の少ない通り、血も生暖かいままの、変わり果てた彼女の姿があった。
彼女を失った悲しみと、すぐ様子を喪に行かなかった後悔の念で押しつぶされそうだった。
しかし、彼女は村唯一の診療所の医師で、村人のことは皆覚えたよと彼女も言っていた。
彼女のお世話になったこともあるはずの者が彼女の命を奪い、、村の中で何の罪悪感もなく、何食わぬ顔で生きていると思うと、いつしか怒りの感情が大きくなっていった…。
はは、年寄りの身の上話は長くてすまないね。
【非占霊聖】
コアタイムは基本的に夜だ。