ー佐田春陽・山のどこかでー
[目を覚ました。しかし、酷く眠たい。ここは?山?何故?
…わずか後、思い出す。自分の事切れた瞬間を。
そして、妹のことを。言葉を。
迎えに行かなければと言われたことを。
止めなければ、そう思い、身体は動かず、声も出ないことに気づく。
ゆっくりと辺りを見回すと、私と同じ境遇なのであろう人々が目に入った。
そして、一際、霧の濃い場所にいるのだということも。
ここは、黄泉との境界線か。ここから還るのか。
ここにいる人たちは、誰かを待っているのだ。自分の家族を、あるいは友人を、あるいは大切な人を。
私も待つ側となったのか、薄ぼんやりと、そんな思考が浮かび上がって、消えた。]