【墓】 動く死体 佐田春陽

[彼女を死に引っ張ったのは、間接的には自分だろうと女は思った。

現世と黄泉の境界が曖昧なこの村で、現世に留まる拠り所にしていたのであろう存在を、女が奪ったからだ。

拠り所を失い、死に引っ張られてしまったのだ。

その原因を作ったのは女で、だから女は、悲しくも辛くもなかった。]

致し方ないな、元々、死に引っ張られていたようだった。

[そして、彼女を託そうと考えた男のことを思い出す。
彼の気配はここでも感じる、強く生命力に満ちた気配。
その強い生命力にかき消され、百千鳥の気配を感じないのだと考えていたのだが。]

…宵闇さんは、彼女と離れたのだろうか。

[きっと死に近づく百千鳥を引き留めてくれると、そう思っていたのだが。*]